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◆創業から今日まで
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創業当時32歳だった私も、気が付けば今年で50歳になりました。当初は、毎朝、早朝清掃のお手伝いと『湯守』(*)を欠かすことなくやってきましたが、ここ5年ほどは田口支配人・北海道に帰郷した佐々木元支配人・青山主任・木下くんたち『燈屋クリーンファイターズ』が『湯守』を任せられるくらいに育ってくれたので最近は少しサボり気味です。
*湯守:
9時頃から、実際にお風呂に入って、浴槽毎に湯温をチェック、掃除の仕上がり具合を見つつ浴槽・床・壁に汚れヌメリが無いことをチェック、設備の不具合が無いかチェック、サウナの温度チェック、全体の清潔感の確認、追加清掃、最後に全ての浴槽をバケツでかき回してお湯を滑らかにし、床を流して良い気を巡らす仕事。
この18年、
“あったかい”を育む
燈を灯す
世を照らす
という経営理念を掲げ、働く仲間たちと共に学び成長することで、ご利用くださるお客様の心をほっこりとできたら嬉しいな。こんな念いで私は仲間たちと多くのことに取り組んできました。その間、色々なことがあり、燈屋の経営は大きく変わりました。
創業当初、食事処は「養老乃瀧」のフランチャイズ店を兼ねていましたが、2008年に完全に自社オリジナル運営への切り替えにチャレンジし、この時に併せて個室を作って宴席営業もスタートさせました。
『癒し処』は、当初は同業他社にならい外部へ業務委託していましたが、そのやり方では社員一同心を揃えて団結することが難しいと判断して、2013年からは自社内で人財育成してリラクゼーション部門を立上げ運営しています。
【おふろ甲子園】での優勝という、嬉しいこともありました。お客様との“あったかいふれあい”・障害者雇用・ラガーマンなどスポーツ選手雇用の受け皿・感謝の清掃・日本一の清潔感・にこにこカード・月間MVP表彰など独自の取組を披露し、2014年の第3回大会で準優勝。
2017年の第4回大会では見事に悲願の優勝を果たし、“日本一のおふろ屋さん”の称号を得ることが出来ました。
外部環境への対応においても、大きな変化が2つありました。
1つ目は2011年の3.11東日本大震災です。
突然の休業、輪番停電を経験しました。節電の意識が高まり深夜営業を見直す風潮もあり、燈屋もそれまで25時だった閉館時間を1時間繰り上げて24時閉館に変更しました。
2つ目は2020年からの新型コロナです。
緊急事態宣言を受けて、長期の臨時休業2回、時短営業も複数回。
食事処や癒し処をお休みすることも度々。大人数での食事は“否”とされてご宴席をお受けすることも出来ず、個室利用も中止。閉館時間はさらに1時間繰り上げて23時となりました。
お客様に多々不自由な思いをさせてしまうことを本当に心苦しく思っていますが、この戦いは今も続いています。
一番大きな経営の転換は、2021年12月に決断して踏み切った、『あかりや倶楽部』(*)を基盤にした、おそらく日本初の【会員制日帰温泉】への業態変更です。
*『あかりや倶楽部』:
2006年6月にスタートして、現在まで約3万人近くの方にご入会いただいている有料の会員制度です。会員制ということで安心してご利用いただける状態が確保され、お誕生月の無料ご招待・会員様限定回数券・来館ボーナス・各種イベント特典などがあり大変リーズナブルで通い易いおふろ屋さんになります。
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◆誰のための燈屋?
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燈屋のような温浴施設には、本当に色々なお客様がご来館くださいます。
小さなお子様から学生さん、若者、バリバリ働き盛り世代、お仕事大ベテラン世代、ご高齢のおじいちゃんおばあちゃん。お一人様、ご夫婦、楽しくおしゃべりしたい学生グループ、仕事やスポーツのお仲間、ご家族二世帯三世帯。温泉マニア、本格サウナー、ゆっくりじっくり浸かる方、カラスの行水の方、入浴文化が違う外国の方、入れ墨やタトゥーのある方。体調の良い方・悪い方、周りの方のことを互いに気遣いながらご利用してくださる方、ご自宅と同じように振る舞い周りの方にご配慮いただけない方、他人の事は全く気にせずご自宅ではやらないようなことをここでは平気でしてしまう方などなど。本当に色々な方がいらっしゃいます。
色々な方がいらっしゃいますと、特に温浴施設の場合、誰に一番ご利用いただきたいのかを絞りこむことが難しく、実は10年以上悩んできました。
未来を担う子供たちを大切にしたいから『第3土曜日はお子様無料招待DAY』、今まで日本の為に頑張ってきてくださったご高齢な方々のために『翁割』、いつまでもご夫婦仲睦まじくお出掛けいただきたいから『1122いい夫婦の日』、会員制日帰温泉と言うからには毎月最初の日は会員様が特別お得にご利用いただける『あかりや倶楽部の日』など、 これらは全て誰を本当に一番大切なお客様とするかを考え、喜んでいただきたい方々向けに企画したイベントです(廃止したものもあります)。
必死に燈屋を世の中に知っていただこうと、名を上げて世に認知していただくことで燈屋の価値が高まり、ご利用くださるお客様の喜び・誇りに繋がるものと信じてきました。そして、第4回『おふろ甲子園』で優勝し日本一になったことで色々なところで取り上げていただく機会も増え従前以上にお客様も増えました。
しかし、今にして思えばこの頃から少しずつ私は燈屋の中で違和感を覚えることがあったように感じます。
『有名無力 無名有力』という言葉があります。
「世間で良く知られているような人は 本当は大した実力が無い場合が多く、本当に力があるのは実は世間では誰も知らないような無名な人である場合が多い。」という意味なのですが、まさに『おふろ甲子園』で優勝して名を上げたのは良かったものの、私たちはいつの間にか“誰のための燈屋か?”を見失って、実際は無力になってしまっていたのです。
そうした中で、新型コロナの波が押し寄せ、2020年以降、休業しなければならない時期があり、ご来館いただくお客様の数が半分に減り、食事処も癒し処も限られた条件の中でしか営業ができなくなってしまいました。ここに至って、本当に私たちが大切にすべきお客様が誰なのか、やっと気が付くことが出来ました。
年齢も、性別も、個人かグループかも、曜日も、利用方法も全て関係ありませんでした。
答えはシンプルに
【あかりや倶楽部の会員様】でした。
これからは世間に広く知られなくていいから、本当に燈屋の良さを理解してくださり私たちと家族や親友のような関係でお互いを大切に信頼し合えるお客様のために、そのようなお客様が心から楽しみ寛ぎ和み喜んでくださるような燈屋になりたい!という自分たちの本心に気付いたのです。
私が創業以来ずっと心に思ってきたことで、燈屋の一番の強みが、このお客様との“絆”です。お客様同士が安心してご利用いただける信頼の絆。お客様とスタッフが互いを家族や親友のように大切にしあえる優しい絆。
それが『あかりや倶楽部』でした。
【あかりや倶楽部の会員様】は、実際に燈屋を何度もご利用いただいた上で使い勝手も良く理解してくださり、燈屋の源泉かけ流し温泉(和こしの湯)を心底気に入ってくださり、弊社の煩いルールにもご理解を示していただき、弊社(私)のやり方・考え方に共感までしてくださったり、馴染みのスタッフもいたりして、家族・友人・子供・孫のように大切にさせていただいたり大切にしてくださったり、お客様同士で素敵なコミュニケーションを楽しんでくださったり、お食事処でも癒し処でもフロントでもいつもお声掛けくださったり、わざわざ入会金をお支払いいただいて細かい入会申込用紙記入にもご理解くださりしっかりご記入くださっている方々なのです。
本当にありがたいお客様方で、私たちが何よりも大切にしている感謝しているお客様です。
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◆ 決断の時
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何年考えても出せなかった結論が、コロナ禍という異常事態がきっかけとなり正しい答えに気付かせてくれました。そして、前述のとおり昨年末に『あかりや倶楽部』を基盤にした【会員制日帰温泉】という、思い切った業態転換の決断に辿り着きました。
燈屋を心から大切にしてくださるお客様=【あかりや倶楽部の会員様】ということを明確にして、これからも経営理念に沿って世の中を明るく照らす一燈となることを決め、思い切って施設自体を会員様専用にしてすべての仕組みを会員様向け前提につくりなおしました。
もちろん、初めてご利用くださる方や遠方からで頻繁にはお越しいただけない方も中にはいらっしゃるでしょうから、そんな方々のためには“ビジター”制度(*)を設けてご利用いただけるようにしました。
*ビジター制度:
会員様のことは私たちが把握させていただいていてそれが大きな運営面の安心材料となっていますので、ビジター様にも身分証明はしていただきます。料金は、ビジター様は少し割高になります。それでも良いから会員様と同じようにルールを守って利用するとご理解・お約束いただけるお客様向けのシステムが“ビジター”制度です。
完全に会員制を謳って利用方法も料金形態も明確に区分している日帰温浴施設は、私の知る限り今のところ他には無さそうです。
会員制にすることで確実に以前よりご利用者数が一時的に減りますので、経営判断としては不正解だと言う方もいるかもしれません。
でも、お客様の側に立って見れば、本当は混んでいる施設よりも適度に空いている施設の方が快適で嬉しいと思います。何より、裸で利用するところなので、安全が担保されて安心して入浴を楽しめるというのは当然ですが一番重要なことです。
会員制であることで、顔の判る人が利用しているという安心感に勝るものは無いと思ったことも、決断に至った大きな理由の一つでした。
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◆ 決断から9ヵ月・・・
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2021年12月1日から会員制日帰温泉に業態転換して9か月が過ぎました。当初はもともと【あかりや倶楽部の会員様】だった方々にも解かり辛い部分があり、誤解を招き、ご迷惑をおかけしたこともありました。申し訳ありませんでした。
最近では会員様方にはこの業態の真意目的もご理解いただけているのではないでしょうか。
「燈屋の雰囲気が変わった、 以前より空いていて良いよ」 (私としては本当はちょっぴり寂しいのですが・・・)、
「お客様同士利用マナーが良くなったね」
「ちゃんと理解すると実は安いよね」
などなど嬉しいお言葉を耳にすることも増えてまいりました。
私たちも手応えを感じています。
これからも、私たちは変化を恐れず常に前向きに挑戦し続けて、お客様に安心して楽しんでいただける寛いでいただける最高の温浴施設になれるよう精進してまいります。
『燈屋物語II』は、主に18年目にして会員制日帰温泉へ移行した真意と経緯を創業から現在までの燈屋史を交えながらお伝えした、私から皆様への「感謝と決意表明」の物語です。
今現在、創業以来4回目の大きなリニューアル工事をしておりまして11月中旬には完成予定です。 発行日は未定ですが、次回の『燈屋物語III』ではそのことについて書かせていただくつもりです。楽しみにお待ちいただければ幸いです。 18年間この地で燈屋を営業させていただきまして、ご愛顧いただきまして、本当にありがとうございました。 どうかこれからも末永くご愛顧いただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
2022年9月7日
燈屋館主
氏原